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「手付金について」

2017/01/26 カテゴリー: 売買

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下記記事のPDFファイル
(容量:217KB PDF形式)いったんPCへ保存したのち開いて下さい。

 

 

 こんにちは。今回は気に入った物件が見つかったので、これから売買契約をしようとしているAさんからの相談だよ。なんでも契約時に手付金というものを用意しないといけないんだけどそれがどういうお金のことなのかよくわからないそうなんだ。博士、わかりやすく説明してよ。

 

 たくっちくんは手付金と聞いてどんなイメージを浮かべるかな?

 

 そうだね。他の人に先を越されないように「押さえておく」とか「本気で買います」とかの気持ちを表す証拠のようなイメージかな。

 

 そうだね。口約束だけでは本当に買うのかどうかわからないからね。やっぱりお金で気持ちを表す、本気度を示すというイメージかな。

 

 でも契約をした後で事情が変わることってあるよね。

 

 そうだね。仕方がないけど契約を解除することになるね。

 

 そんな場合支払った手付金はどうなるの?

 

 たくっちくん、いい質問だね。では、これから手付について少し詳しく説明していくことにしよう。

 

 博士、よろしくお願いします。

 

 手付金とは、広く一般的に契約の締結に伴って、買主などが相手方に交付する金銭のことをいうんだよ。

 

 じゃあ、買うことを証明するためのお金なの?

 

 それもあるけどそれだけではないんだ。まず、①契約が成立したということの証拠とするために交付される手付を証約手付、②当事者の一方が債務不履行に陥った場合の損害賠償の額を予定するために交付される手付を違約手付、③契約が成立したのち相手方が契約の履行に着手するまでは契約を自由に解除することができる手付を解約手付というんだよ。

 

 言葉は一つなのに3種類も意味があるんだね。

 

 そうなんだ。

 

 それじゃあ、売買契約をして手付金を支払うときはこの種類の手付金ですよって確認して契約するの?

 

 鋭いね。たくっちくん。手付金には先ほど言ったようにいくつかの種類があるんだけど、当事者間で、手付金を交付する目的をはっきりと決めなかった場合には、民法557条により解約手付として交付されたものと推定されるんだよ。

 

民法第557条1項

 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

 

 今回相談者Aさんの場合はどうなんだろう?

 

 通常、不動産取引の場合は、ほとんど解約手付であるのが一般的なので「解約手付」として考えていこう。ただ、売主が宅建業者の場合であればどんな取り決めをしたとしても「解約手付」になることを申し添えておこう。

 

 博士、その解約手付についてもっと詳しく教えてよ。

 

 解約手付というのはいったん締結した売買契約を後に解除しうることとして交付される手付なんだ。

 

 ええ!?やめることができる前提で契約するの?どういうこと?どうなっているの?

 

 たくっちくん、基本的に契約は一度締結するとやめることができないんだ。売るといえば絶対売る。買うといえば絶対買う。これが大前提だ。そうしないとお互い契約をした意味がなくなると思わないかい?

 

 そうだよね。やめることのできる契約なんて意味ないよね。

 

 ただ例外もあって、民法で契約をやめることができる場合が定められているんだ。例えば詐欺、強迫、制限行為能力者による契約などがそうだよ。それ以外、基本的に契約はやめることができない。たくっちくん、これってすごく息苦しくないかい?

 

 そうだよね。博士も最初に言っていたように事情があって、仕方なく契約をやめることもあるよね。

 

 そこでこの解約手付の登場となるわけだよ。この解約手付が交付されると契約締結後、買主は手付金を放棄して、売主は手付金の倍額を償還して、その契約を解除することができるんだよ。たとえば買主が手付金として100万円を売主に支払えばその100万円を放棄して、また、売主は受領した手付金100万円に自分の懐からもう100万円出して合計200万円を買主に支払えば締結した契約を解除することができる。そういう制度なんだ。この解約手付による解除は理由なんていらない。極端だけど、ただ単に気が変わったというだけでもオッケーなんだ。

 

 でも契約の相手方(売主にとっては買主、買主にとっては売主)が、一生懸命契約に向けて動いているのにいきなり「手付解除します」なんて言われたら困るよね。理由に関係なくお金で解決だなんていわれてもそれまでの努力が無駄になってしまうよね。

 

 その通りだよね。そこで先に説明した民法557条において「相手方が履行に着手するまでは」という制限を設けているんだ。契約の相手方が契約の履行に着手(客観的に外部から認識できるような形で履行行為の一部をすること、または、履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をすること)した場合には、もはや手付により契約を解除することはできないと定めている。こうして相手方の期待を裏切らないようにしているんだ。

 

 なるほど。契約に向けての努力が無駄にならないように考えられているんだね。

 

 ただ、この履行に着手という概念は明確でないため、実際の売買契約では手付による解除ができるのは契約締結後、例えば1か月後に限るといったように当事者間で手付解除ができる期間を定めているケースが多いね。ただし、売主が宅建業者の場合は手付解除ができる期限を設定するなどして制限することはできないから注意が必要だよ。

 

 博士、自分がもう既に履行に着手していて解除したいと思った場合はどうなるの?そういうこともあるよね。

 

 そういう場合は、相手方さえ履行に着手していなければ、手付解除はできるよ。自分が履行したかどうかということは関係ないんだ。

 

 手付解除して、もし、その相手方が手付金の額以上の損害を被っている場合はどうなるの?

 

 手付解除した場合は、お互い(解除したほうも、解除されたほうも)損害賠償の請求をすることはできないのだよ。また、その損害が手付金の額を下回っていたとしても償還されないんだ。

 

 お互い手付の額で納得しましょうというわけだね。

 

 そういうことになるね。買主が解除したときは、手付金を放棄することによって契約を解除する以上、手付金は買主に返還されない。また、売主が契約を解除したときは、交付した手付金の倍額が償還される。このようになっているんだ。

 

 博士、今日はいろいろとありがとうございました。相談者のAさんもこのコーナーを参考に安心、安全そして納得のいく取引をして、気に入った物件を購入してほしいね。

 

 わからないことや不安になることがあれば、大阪宅建協会をはじめとする不動産関連団体が窓口となる相談所までご相談ください。

 

 宅建博士、ありがとうございました。

 

 

 ライター 長村 良二(北摂支部会員)