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「借家の転貸借について」

2017/02/28 カテゴリー: 賃貸

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下記記事のPDFファイル
(容量:273KB PDF形式)いったんPCへ保存したのち開いて下さい。

 

 

 こんにちは。今回は借家の転貸借について教えてくださいというAさんからの質問だよ。

 

 たくっちくん「転貸借」って分かるかな?

 

 て・ん・た・い・しゃ・く?

 

 転貸借とは、一般的には「又貸し(またがし)」と言われています。借りたものをまた他の誰かに貸すことだよ。そして、これを元の貸主に言わずに貸すことを「無断転貸借」と言うんだ。

 

 あっ、Bちゃんに借りた本を、Cちゃんに貸したことがある。

 

 そう、それを「転貸借」というんだよ。民法の第612条では、借主が貸主に無断で転貸借することを禁止していて、転貸借をするには前もって貸主の承諾が必要である事が定められているんだ。無断で転貸借した場合には「信頼関係を破壊された」とみなされ民法第612条2項によって契約を解除されることとなってしまうんだよ。

 

 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

 1.賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を

   転貸することができない。

 2.賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、

   賃貸人は、契約の解除をすることができる。

 

 勝手な又貸しはダメなんだね。

 

 そうだね。でもこれが借家となると少し事情が変わってくるんだ。借家の賃貸契約は長期間に渡り、貸主と借主の信頼関係を維持していく契約関係であり、いままでに裁判例では、先程の「信頼関係を破壊の法理」が重視されていて、借主が貸主の承諾なく第三者に借家を転貸借させた場合においても、借主の行為が、ただちに貸主に対する背信的行為であると認めるに足らない「特段の事情」がある場合においては、民法第612条2項による解除権は発生しないものと解されているんだよ。

 

 「特段の事情」ってなんなの?

 

 その「特段の事情」があるということについては、借主の側でその状況に応じて事情を主張しなければならないんだけど、たとえば、親族その他借主と特殊な関係にある者に対する転貸借の場合には、その状況を主張し「信頼関係の破壊の法理」による解除の主張に当たらないとして、しりぞけられた裁判例が存在しているんだよ。
 ただし事業用の場合には、無断転貸借の場合の「特段の事情」が認められないことが多いので、賃貸借権の譲渡や転貸借には注意が必要だよ。

 

 やっぱり、前もって貸主さんに承諾を得ておく方がよさそうだね。

 

 そうだね。トラブルや裁判などになる前に事前に貸主の承諾を得るようにした方がいいでしょうね。

 

 もし、貸主さんが無断転貸借を見つけた時はどうすればいいの?

 

 貸主が借主の無断転貸借を見つけた時、たとえば、借主や同居人以外の人の居住や使用、または他人名義での賃料の支払いなどがあった場合には早々に借主に対してその事情を確認することが大切なんだよ。借主の無断転貸借を認めたくないと思いつつもその行為を黙認していると暗黙の了解と解されてしまいます。また、賃貸契約書などに転貸借の禁止が記載されていたとしても、それに気づいた時点で異議を申し出なければ、そして、その期間が長期化すればするほど貸主が承諾したと解釈され、後の裁判などでも契約の解除が認められなくなってしまうんだ。

 

 無断転貸借を見つけた時、どうやって契約を解除したらいいの?

 

 民法第612条2項には、契約の解除について、特定の手続きを指定していませんが、後々の事を考えて行うのであれば書面にして、内容証明郵便などで意思表示することをお勧めするね。それでも退去しないときは弁護士などに相談する方がいいね。
 博士、貸主さんが転貸借を認めた時はどうなるの?

 

 貸主が事前・事後にかかわらず転貸借を認めた場合には民法第613条により貸主Aと借主(転貸人)Bの関係はそのまま継続します。貸主Aと転借人(借主から又貸しを受けた人)Cとは、契約関係がないことになるんだ。しかし、転借人Cは貸主Aに対し家賃等の支払い義務を負うこととなるんだよ。

 

 第613条  (転貸の効果)

1.賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。

2.前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。

 

 

 転貸借しても借主(転貸人)Bの関係は続くの?

 

 そうだよ。貸主Aは転貸借の場合には、賃料の請求は借主(転貸人)Bまたは転借人Cにでもできるんだよ。借主(転貸人)Bに請求する場合には、今まで通り本来の賃料を請求することとなりますが、転借人Cに対しては本来の賃料か、借主(転貸人)Bと転借人Cとの転貸借の賃料のどちらか低い方の額しか請求できません。もし、転貸借の賃料が本来の賃料に不足する場合は、その差額を借主(転貸人)Bに請求することになるんだ。また、転貸借の賃料が本来の賃料より多い場合には、転借人Cはその差額を借主(転貸人)Bに支払わなければならないんだよ。

 

 AB間の賃貸借契約とBC間の契約の二重構造になるんだね。
 そういう転貸借ってよくあることなの?

 

 そうだねぇ。例えば「サブリース」と言われる賃貸方式で、業者が貸主から賃貸マンションを一棟ごと借り受け、個別に転貸借するケースなどがあるね。

 

 博士、ほかに注意することはあるの?

 

 そうだね。AB間の賃貸借契約が終了した場合、BC間の契約がどうなるのかという点の注意が必要だよ。

 

 AB間の賃貸借契約が終われば、BC間の契約も終わるんじゃないの?

 

 そうじゃないんだよ。貸主Aの承諾のうえ適法に成立した転貸借では、貸主Aは転借人Cの利益も保護しなければいけないことになるんだ。AB間の賃貸借契約がどのようにして終了したかによってBC間の契約の取扱いが違ってくるんだよ。
 代表的なケースを記載しておくので参考にしておくといいよ。

 

①期間満了や解約申し入れによるAB間の賃貸借契約の終了の時

 BC間の契約は終了しません。ただし、賃主Aが転借人Cへその旨を通知し6ヶ月を経過することでBC間の契約が終了します。貸主Aが転借人Cに通知することが必要です。

【借地借家法第34条(建物賃貸借終了の場合における転借人の保護)】

 しかし、貸主Aが終了の通知をしていたにもかかわらず、転借人Cが建物の使用を継続している場合には、貸主Aがただちに異議を述べない限り、貸主Aと借主(転貸人)Bの賃貸契約が更新されたものとなってしまいます。

 借主(転貸人)Bも転貸借契約の終了と転借人Cの建物使用の終了に注意が必要です。

 

②合意によるAB間の賃貸借契約の終了の時

 転貸借の契約は終了しません。貸主Aと借主(転貸人)Bが話し合って解約するわけですが、転借人Cの意思は反映されていません。それゆえに貸主Aは転借人Cに対して対抗できません。貸主Aと借主(転貸人)Bが話し合う場合には、転借人Cの今後の対応なども含めて合意しておくことが必要です。

 

③借主(転貸人)Bの債務不履行によるAB間の賃貸借契約の終了の時

 借主(転貸人)Bが貸主Aへ賃料を支払っていない等の債務不履行の場合には、貸主Aは借主(転貸人)Bへ催告するだけで足り、転借人Cに支払いの機会を与えることなく、AB間の賃貸借契約に併せてBC間の転貸借契約も終了します。貸主Aは、転借人Cに事前に通知することなく建物の返還請求をすることが出来ます。

 

 なんだかむずかしいんだなぁ。

 

 そうだねぇ。だから一般的には転貸借を禁止している賃貸借契約が多いんだよ。

 

 博士、転貸借について、他に知っておいた方がいいことはある?

 

 あとは、造作買取請求権だね。

 

 ぞーさく、かい、とり?

 

 ハハハ、造作物の買い取り請求権だよ。
 貸主に同意を得て建物に付けた畳・建具などの造作物を、借主は期間満了や解約の申し入れで契約を終了する時に貸主に買い取ってもらう事を請求できる権利のことだよ。この権利は転借人が契約の終了をする時にも準用されることとなるので、貸主は留意しておくことが必要だよ。
 【借地借家法第33条(造作買取請求権)】

 

 博士、又貸し(またがし)って、いろいろと複雑なんだね。

 

 そうだね、むずかしいと思ったときには、一人で悩まずにハトマークのお店か、大阪宅建協会をはじめ不動産関連団体が窓口となる相談所までご相談ください。

 

 宅建博士、ありがとうございました。

 

 

 ライター 長尾 敏春(北摂支部会員)