ライター:研修インストラクター 和田 俊信(新大阪支部)
| 大家さん(貸主)から「電気代等の光熱費が上がっているし、物価も上がっているので、家賃を値上げ(増額)させてほしい…」と言われました。断ったら退去しないといけないのですか? |

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長い間にわたり不動産を賃貸借していると、昨今のような物価の変動等が起きた場合、今現在支払っている賃料が物価に対して「不相当」になることがあります。その際、借地借家法では貸主(大家さん)、借主双方共に賃料増減額請求ができると定められています。
ちなみに「不相当」の考慮要素は以下の3つです。
①土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減(固定資産税や消費税の上昇等) ②土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下、その他の経済事情の変動(電気・水道代等の光熱費の上昇や物価高、建設資材の高騰、借入金利の上昇等) ③近傍同種の建物の家賃と比較(周辺のよく似た物件と比較して家賃等が安すぎる)
よって、大家さんが経済情勢の変動(電気代等の光熱費や物価が上がっている事)に伴い、家賃の値上げを請求するのは上記②より可能な場合がありそうです。
大家さんから賃料の増額請求があった場合、その後の対応や法的手続の流れは以下の通りです。大家さんが、賃料増額請求を行った場合、家賃の値上げに合意しない借主は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、増額請求前の額の家賃を支払えばよいとされています。借主が従前(増額請求前)の家賃を大家さんに支払い続けていれば、裁判が確定するまでの間は家賃未払い(家賃滞納)にはなりません。ただし、裁判により家賃増額が正当と確定した場合に、増額請求後の支払額との間に不足額があれば、借主は、その不足額に年1割の利息を付して、大家さんに支払う必要があります。
以上より、大家さんからの家賃の増額請求を断ったとしても、すぐに退去しないといけないというわけではありません。ちなみに、賃料増減額請求については、調停前置とされていますので、いきなり裁判になる訳ではありません。まずは簡易裁判所に調停申し立てを行い、調停で合意がまとまらなかったら、請求を行った側が訴訟を提起することになります。
ところで「一定期間家賃を増額しない」旨の特約がある場合、借主に有利な特約として、その特約は原則として有効です。(大規模な天災などが原因で、経済的事情が激変した等、変動した事情の内容によっては、例外的に増額が認められることがあります。)逆に「一定期間家賃を減額しない」旨の特約は、借主に不利な特約として、その特約は原則として無効です。(定期建物賃貸借契約では認められます。)
実際に大家さんから「家賃を上げさせてほしい・・・」と要求された場合、要求に納得できなければ、裁判確定までの間は(増額請求前の家賃を払っておけば)、退去させられることはありません。一番良くないのは、借主が誰にも相談せずに、大家さんの要求に納得できないからと言って家賃を全く払わない事です。この場合は、債務不履行(家賃滞納)により、大家さんからの賃貸借契約の解除理由とされてしまいます。当然、賃貸借契約が解除されると、借主は退去しないといけなくなります。まずは大家さんと一度お話をしてみてください。大家さんの要求する家賃の額まで上げなくても、少しだけの増額でひょっとしたら折り合いがつくかも知れません。 |
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