ライター:研修インストラクター 長尾 敏春(北摂支部)
| お年寄りの方のご自宅を売るための相談を受けたのですが、どんなところに注意をすればいいのか、何を準備すればいいのか教えてもらえますか? |

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まず、ご高齢の方の売買で一番大切なことは、所有者ご本人の「判断能力」の有無です。認知症などでご本人の意思がはっきりと確認できない場合には、いくら契約が終わっていても最終的に司法書士の「売主の売却に対する本人の意思確認」ができなければ取引自体が出来ないこととなり、買主などの関係者に迷惑をかけてしまうこととなってしまいます。
所有者ご本人の「判断能力」に問題が無ければ良いのですが、不安があるようであれば事前に医師などの診断を受け、判断能力を欠くとされた場合は家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てて成年後見人を選任してもらわなければ売却することが出来ません。これには数ヵ月の期間が掛かるので早めの手続きを行っておくことが必要です。また、そのお年寄り(被後見人という)のご自宅の売却の場合には、売却後の被後見人の安定した生活が見込めない場合には家庭裁判所は売却の許可を出さないので、安定して生活できる場所が確保できるよう、予めしっかりとした移転先を決めておく必要があります。
また、ご高齢の方のご自宅売却後の安定した生活を確保するための資金計画に重要な売却後に係る譲渡所得に課せられる税金についてですが、所有期間によって所得税と住民税の税率が変わります。(※) ・5年以下…短期譲渡所得➡譲渡所得×税率39%(所得税30%+住民税9%) ・5年超え…長期譲渡所得➡譲渡所得×税率20%(所得税15%+住民税5%) (平成25年より復興特別所得税として所得税額の2.1%が別途かかります。) この場合の譲渡所得とは、譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用となります。
この場合の取得費とは、自宅を購入した時の契約書とか領収書で証明しなくてはいけないのですが、短期譲渡の場合には手元に残されていることは多いでしょうが、購入より10年、20年、30年と経っていると紛失されているケースが多いと思われます。この場合には取得費は、売却価格の5%のみとみなされ、売却価格の95%から譲渡費用を差し引いたものが譲渡所得として上記の税率を掛けた譲渡所得に税金が課せられます。
そこで役立つのが、居住用財産譲渡の3000万円特別控除です。この特別控除は一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3000万円を控除できるというもので、譲渡所得が3000万円に満たない場合は、その金額が限度となりますが、取得費が分からない場合や証明できない場合には大変ありがたい制度です。ただし、適用要件があるので注意してください。 ① ご自身が居住していた住宅であること ② 居住しなくなった日から3年経過した年の12月31日までに譲渡した住宅であること ③ 災害等で滅失したか、住宅を取り壊した日から1年以内に譲渡の契約が締結され、かつ②の要件を満たす敷地で、取り壊し後から契約までの間に貸付などの業務に供していないこと 以上が要件で、さらに夫婦で共有登記をして夫婦で居住していた場合は、夫婦それぞれの持分に対してそれぞれ3000万円ずつの特別控除がうけられます。
さらに、所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合には、上記の3000万円特別控除とセットで利用できる軽減税率の特例もあります。こちらの要件も3000万円特別控除の要件とほぼ同様なので、該当する場合にはご活用ください。 ・3000万円特別控除後の譲渡所得のうち 6000万円以下の部分・・・税率14%(所得税10%+住民税4%) 6000万円超える部分・・・税率20%(所得税15%+住民税5%)となります。 そしてご高齢の方のご自宅の売却の際に困るのが、家財道具や日用品などの処分です。ご本人だけではなかなか進まず身内の方や介護関係者の協力が必要でしょう。あるいは専門業者に依頼して前もって見積もりを取っておくと良いでしょう。一般的に家財道具などの処分は引っ越し料金よりも高くなることが多いので注意が必要です。
以上のようにご高齢の方のご自宅の売却には事前の準備と確認が必要なので余裕をもって検討していただくことが大切ですね。
(※)掲載されている情報は一般的なものであり、個々の状況に合わせたものではありません。特例制度の利用を検討される場合は、必ずご自身で適用条件を確認し、必要に応じて税理士等専門家にご相談ください。 |
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