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「高齢の親族のための不動産取引について」

2016/01/22 カテゴリー: 売買

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下記記事のPDFファイル
(容量:215KB PDF形式)いったんPCへ保存したのち開いて下さい。

 

 

 こんにちは。今回は高齢のお父さんが所有する自宅を売却するにあたり、注意するべき点を教えてほしいというAさんからの相談だよ。Aさんのお父さんは近いうちに自宅を売って、その資金で施設に入ることを希望しているみたいなんだけど、最近、認知症の症状がよくでるようになってきたみたいなんだ。博士、こんな場合はどうしたらいいの?

 

 現在の日本は超高齢社会になってきています。こういった相談は近年、ますます増加する傾向にあります。Aさんのお父さんだけが特別なのではなく、これは誰もが身近に体験することだね。

 

 人が年を取ることは避けられないし、判断能力が低下することも仕方がないことだと思うよ。

 

 そうですね。自宅を売却するという法律行為の成立には意思能力の有無が重要な要素となります。Aさんのお父さんの契約について、当事者に法律行為の結果や意味を正しく認識する能力が欠けていれば、契約は無効ということになります。最近、認知症の症状が頻繁にでてきているということですから意思能力の有無がやはり重要ですね。

 

 Aさんとしてはなんとかしてお父さんの希望を叶えてあげたいんだよ。博士どうすればいいの?

 

 認知症等によって判断能力が十分でない方を保護し支援するため、裁判所で契約や財産管理等の法律行為において、本人の権利を守る成年後見人等を選ぶことで法律的に支援する制度が設けられています。これを「法定後見制度」というんだよ。

 

 すごく難しそうだね。その「法定後見制度」についてもう少し詳しく教えて。

 

 この制度には①後見②保佐③補助の3種類あり、本人の判断能力の程度によって区分されます。そして、家庭裁判所によって、成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が選ばれ、本人に対して法律的な支援、保護がなされます。また、成年後見人等の権限や内容が登記され、「登記事項証明書」によって開示されます。この仕組みによって本人を保護するとともに、取引の安全が保たれるんだよ。

 

 それなら安心だね。

 

 そうですね。次に先ほど述べた①後見②保佐③補助についてどのような違いがあるのか簡単に確認しておきましょう。①の後見は判断能力が欠けているのが通常の状態の方を対象とした場合の制度です。②の保佐は判断能力が著しく不十分な方を対象とした場合の制度、③の補助は判断能力が不十分な方を対象とした場合の制度です。いずれも家庭裁判所が審判を行い、本人を援助するために①成年後見人②保佐人③補助人が選任されます。選任されたからといってどのような法律行為もできるというものではなく、行える法律行為はそれぞれの制度に応じて制限されています。また、本人が判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分になった場合に備えてあらかじめ財産管理等について代理権を与える「任意後見制度」というものもあります。これについてはまた機会があればお話ししましょう。

 

 今回のAさんの場合はどういうことになるの?

 

 最近、お父さんに認知症の症状が頻繁にでるということですが、例えばAさんのお父さんの判断能力が欠けている状態であれば、家庭裁判所に成年後見人等の開始審判請求を申し立てる必要があります。Aさん自身が成年後見人等となることも可能です。実際に手続きを行うのであれば行政書士や司法書士、弁護士といった法律の専門家に相談されるのが良いと思います。その結果、例えばAさん自身が成年後見人に選任されたとしたならば、成年被後見人(被は守るという意味。成年後見人に守られている人)として父親の氏名、生年月日、住所、本籍と成年後見人であるAさんの氏名、住所、選任の裁判確定日等が登記されることになります。これらの事務を終えた後、現実的に言えばAさんが父親の代理人となって自宅の売却についての具体的な作業を行っていくといったことになるんだよ。

 

 けっこう大変そうだね。
 Aさんに兄弟姉妹がいれば、みんなで話し合うことも大事だね。

 

 そうだね。事後のことも念頭に置いて、誰を成年後見人等にするのか専門家も交えて関係者同士よく話し合ったほうがいいと思います。ここでもめてしまうと前に進めなくなってしまいますので十分時間をかけて話し合うといいですね。

 

 Aさんは大変かもしれないけど、お父さんのためにがんばってほしいね。

 

 たくっちくん。今回はお父さんの自宅ということなので、まだもう一つ越えなければならないハードルがあるんだよ。

 

 どんなこと?

 

 自宅ということはAさんのお父さんの「居住用の財産」ということになります。この場合、通常の不動産売買のように買主が決まってもすぐには契約できないんだよ。

 

 どうしてなの?今回Aさんのお父さんは自宅を売って施設に入るというはっきりした目的があるよ?問題ないと思うんだけど。

 

 たくっちくん、いい質問ですね。居住環境の変化は、本人の精神面に大きな影響を及ぼすおそれがあることから、事前に家庭裁判所に「居住用不動産処分許可」の申し立てをし、許可を得る必要があるんだよ。具体的に言うと、①宅建業者に自宅売却を依頼する→②買主が見つかる→③「居住用不動産処分許可」の申し立てを裁判所にする→④許可の審判が下される→⑤売買契約可能といった流れになります。申し立てには具体的に、売却する理由、どこの誰にいくらで売却するのか等を詳細に記述しなければなりません。また売買契約書のひな形、売却価格の根拠となる資料も添付しなくてはいけません。申し立てから許可までケースバイケースですが概ね2週間から1ヶ月くらいかかるようです。

 

 なかなか大変な作業だね。

 

 法律的に弱い立場の人を守ってあげるにはこういった厳格なシステムが必要なんだよ。

 

 これならAさんのお父さんも安心だね。
 AさんにはこのQ&Aをしっかりと参考にしてもらって、是非、お父さんの希望を叶えてあげてほしいね。博士、ありがとうございました。