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「契約違反について 売買編」

2017/07/25 カテゴリー: 売買

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下記記事のPDFファイル
(容量:313KB PDF形式)いったんPCへ保存したのち開いて下さい。

 

 

 こんにちは。今回はマンションを契約したけれど残りのお金を用意できなくなって約束の日に支払えなくなったAさんからの相談だよ。契約した時には手付金を支払ったけど、手付解除できる期限も過ぎたので、このままでは契約違反になると媒介を担当した宅建業者さんに言われたそうなんだ。どうなるの博士?

 

 それは大変だね。Aさんの資金調達の計画がうまくいかなかったんだね。住宅ローンは利用しないつもりだったのかな?

 

 そのようだね。話によると現金で購入を考えていたらしいんだ。売主さんは宅建業者ではなく一般の人みたいだよ。

 

 住宅ローンを利用しないので融資特約(融資が受けれなかったら契約は白紙になる)も契約条項にはなさそうだね。また手付金を放棄すれば契約を解除できる手付解除(不動産Q&A「手付金について」を参照)の期限も過ぎているということなんだね。

 

 そうなんだ。

 

 そうだとしてもAさんはきちんと約束を守らないといけないね。もし守れないということになれば相手方(売主)の期待を裏切ってしまうことになるからね。

 

 そうなんだけど、Aさんは残りのお金の用意ができないんだ。だから博士に相談してるんだよ。

 

 たくっちくん、もし、君が今回の売主さんの立場で約束した日に、お金が入ってこないとなれば、どうだい、平気かい?

 

 それは困るよ。そのお金でいろいろと計画を立てているかもしれないし・・・・・。

 

 どんな理由があるにせよ残代金を支払えないとなるとやはりAさんは約束を破ってしまうことになるよね。媒介を担当した宅建業者さんが言うようにAさんの契約違反になってしまうということだよね。
 そこで、このような事態に備えて通常、不動産の売買契約書には「契約違反による解除」という条項が設けられているんだ。

 

 どんな内容なの?

 

 簡単に言うとお互い約束を破ったら、破られた方が契約を解除することができるという決まりだよ。そしてそれに伴う違約金(損害賠償額の予定)というものがあらかじめ取り決められているんだ。違約金の額は通常売買価格の10%~20%に設定しているケースが多いね。

 

 だとしたら、今回、残りのお金が用意できないからという理由でAさんからは解約できないの?

 

 たくっちくん鋭いね。その通り。契約は一度成立するとそう簡単にやめられるものではないんだ。
 売るといえば絶対売る。買うといえば絶対買う。これが鉄則だよ。そうしないと契約の意味がないよね。まして約束を果たせない方からやめますとは言えないんだ。

 

 もっと詳しく教えて。

 

 いいとも。今回、残代金を支払う日とマンションの所有権移転及び引き渡しを同一日と考えてみよう。この日が約束の日だよね。売主はマンションを売り渡すための諸書類の準備及び引き渡し、買主は残代金の支払い、このことがお互いのいわゆる「債務」(守らなければならない約束事)だよね。仮に約束の日にAさんが残代金を用意できなかったとしてもただそれだけでは直ちに「履行遅滞による債務不履行」という法律違反を犯したことにはならないんだ。

 

 どういうこと?

 

 それはね「同時履行の抗弁権」といってその時点ではAさんは「まだマンションの引渡しを受けていないから残代金は支払わない」と主張することができるんだ。また売主さんも「まだ残代金を受け取っていないから引き渡さない」と主張することができるんだ。お互い約束の日に約束を守っていない「違約」の状態なんだけど、同時履行の抗弁権が存在するのでお互いに「履行遅滞による債務不履行」という法律上の責任を追及することができないんだ。よく住宅ローン利用の場合で「ローン特約期日を過ぎて解約をする場合は違約になります。」といった説明をする宅建業者さんもいるようだけど契約違反は約束の日を起点に違約となる問題だからその説明は間違っているよ。ローン特約期日を過ぎてしまうと融資特約による白紙解約ができないんだ。通常不動産売買契約書の中ではローン特約期日から残代金決済日(約束の日)までの間で契約の解除に関する条項はないんだ。どうしてもその間に解除したいということであればこれは双方合意による解除ということになるんだよ。

 

 それでこれからどうなるの?

 

 少し余談が長かったね。手順としては、売主さんがAさんの責任を追及するにはまず①自己の債務を提供して②相当の期間を定めてAさんに対しその履行を催告しなければいけないんだ。

 

 Aさんに対するラストチャンスだね。

 

 そのとおり。自己の債務の履行を提供し相当の期間を定めて催告して、そうして相手方の同時履行の抗弁権を排除してここで初めて「あなたは履行遅滞による債務不履行という法律違反を犯していますよ。だから私は契約の解除をしますよ。」ということが言えるわけだ。そして実際にその期間内に履行すなわちAさんの残代金支払いがなければ契約の解除をすることになるんだ。

 

 お金を払わないからと言ってすぐに契約解除できないんだね。

 

 人と人との約束は重たいものだからね。

 

 そのあとどのような流れになるの?

 

 Aさんは売主さんにあらかじめ契約で定められた違約金を支払うことになるんだよ。ただ、売主さんは解除しないでAさんにずっと催告をしつづけることも可能なんだ。

 

 なんだか複雑だね。

 

 そんなことないよ。仮に約束の日の何か月後かにAさんが残代金をちゃんと用意し契約が成就したとしよう。売主さんに日数がかかり遅れて迷惑をかけたけど約束を果たしたことに変わりはないよね。このような場合、契約成就の時までに売主さんに発生した損害額は先に定めた違約金とはまったく別次元の問題だから混同しないようにしてね。ここでお話ししているのは解除した場合の違約金だからね。

 

 では、今回売主さんが自己の債務の履行を提供し、相当の期間を定めて催告したにもかかわらずAさんが残りのお金を支払えなかったことを理由に契約を解除した場合、Aさんは違約金を支払わないといけないという結論だね。

 

 Aさんは気の毒だけど、そういうことになるね。

 

 不動産は大きな買い物だから慎重に契約しないといけないね。

 

 そうだね。もしわからないことや不安なことがあれば大阪宅建協会をはじめ不動産関連団体が窓口となる相談所まで相談して下さいね。

 

 宅建博士、ありがとうございました。

 

 

 ライター 長村 良二(北摂支部会員)