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「賃貸借契約終了時の注意点と原状回復について」

2019/10/02 カテゴリー: 賃貸

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下記記事のPDFファイル
(容量:664KB PDF形式)いったんPCへ保存したのち開いて下さい。

 

 

 みなさん、こんにちは。今回は賃貸借契約の終了時の注意点について博士にお話ししてもらうよ。博士、お願いします。

 

 賃貸借契約の終了ということは、ほとんどの場合が移転先での新しい生活が始まる前ということで意識がそちらへ行ってしまいがちですが、思わぬトラブルを避けるために、少し落ち着いて対応していただきたいですね。

 

 どんなところに気を付ければいいんですか?

 

 そうだね、今の部屋に入る前に交わした賃貸借契約書を再度確認してみることだね。その中に退去時にしなければならないことが書かれているよ。

 

 そういえば、大切にしまい込んでいて読んだことなかったなぁ。

 

 まず、解約通知を出さなければいけないんだけど、賃貸借契約書に「解約しようとする〇ヶ月前に提出しなければならない。」と記載されていると思います。居住用の場合は、だいたい1ヶ月前ということになっていると思うけど、中には2ヶ月前とかも有るので気を付けてください。所定の書式が有るようであれば、その項目に従って必要事項を記入し提出するようにしましょう。

 

 1ヶ月前ですね、月を超えないように気を付けなければいけないね。

 

 そうだね、そして解約通知は一度提出すると取り消せないことが多いので、次の移転先とのタイミングを良く考えてから提出するようにするんだよ。もし、指定の書式がない場合には、貸主または管理会社に聞いて書面で提出するようにした方がいいよ。それと、退去する月の家賃の日割り計算が有るのか無いのかも確認しておくと退去立会の日の予定が立てやすいよ。

 

 退去立会の日って引越しの日でしょ?

 

 退去立会とは、引越しが終わって部屋が空になり、清掃も終わって貸主または管理会社に部屋のチェックを受けて鍵を返却することだよ。

 

引越しの日じゃなくてもいいんだね。

 

 引越しは日によって引越し業者の時間がずれたり、思わぬトラブルが有ったりで時間が不安定になってしまうことが有るので、出来れば退去期限までの後日に予定した方がいいね。

 

 解約通知を出した後は何をすればいいの?

 

 そうだね、部屋の造作などを変えている場合には引越しまでに元に戻しておくことだね。それと、電気・ガス・水道・電話・ケーブルテレビなどのライフラインの停止の手続きと精算の申込を前以てしておいて、引越しが終わった後で退去立会を受けなければいけないんだよ。

 

 そうか、そうか。

 

 そして、賃貸借契約のトラブルで一番多いのが、原状回復についてなんだ。

 

 げんじょうかいふく

 

 基本的に借りたものは借りた時の状態に戻して貸主に返すというのが本来なんだけど、賃貸借契約においては一般的にその賃貸借期間が長く、経年劣化や自然損耗によりどうしても借りた時の状態に戻すことが出来ないことがあるよね。そこで、居住用の賃貸借契約においては「善良なる管理者の注意義務」(善管注意義務)をもって使用したうえでの経年劣化や自然損耗は貸主の負担とすることになっているんだよ。

 

  「善良なる管理者の注意義務」って?

 

 自分のものよりも大切に扱うっていうことだよ。

 

 そうかぁー、それなら借主は安心だね。

 

 ただし、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超えるような使用による損耗や汚損・破損等については、賃借人が負担すべき費用となっているんだよ。

 

 もし、汚したり、こわしたりした時だね。

 

 そうだね、これは故意過失を問わずとあるので、気付いていなかったとしても借主の責任であれば補修費を負担しなければいけないんだよ。その具体的内容は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」に紹介されているので参考にするといいよ。

 

 

 

1 賃貸人・賃借人の修繕分担表

賃貸人の負担となるもの

賃借人の負担となるもの

【床(畳・フローリング・カーペットなど)】

1.畳の裏返し、表替え(特に破損していないが、次の入居者確保のために行うもの)

2.フローリングのワックスがけ

3.家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡

4.畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)

1.カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ(こぼした後の手入れ不足等の場合)

2.冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床に汚損等の損害を与えた場合)

3.引越作業等で生じた引っかきキズ

4.フローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)

【壁、天井(クロスなど)】

1.テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)

2.壁に貼ったポスターや絵画の跡

3.壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)

4.エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡

5.クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)

1.賃借人が日常の清掃を怠ったための台所の油汚れ(使用後の手入れが悪く、ススや油が付着している場合)

2.賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合)

3.クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食

4.タバコのヤニ、臭い(喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合)

5.壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)

6.賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡

7.落書き等の故意による毀損

【建具等、襖、柱等】

1.網戸の張替え(特に破損はしてないが、次の入居者確保のために行うもの)

2.地震で破損したガラス

3.網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)

1.飼育ペットによる柱等のキズ、臭い(ペットによる柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合)

2.落書き等の故意による毀損

【設備、その他】

1.専門業者による全体のハウスクリーニング(賃借人が通常の清掃を実施している場合)

2.エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)

3.消毒(台所・トイレ)

4.浴槽、風呂釜等の取替え(破損等はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)

5.鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)

6.設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)

1.ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すす(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)

2.風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)

3.日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損

4.鍵の紛失又は破損による取替え

5.戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草

 

 

 

2 賃借人の負担単位

負担内容 貸借人の負担単位 経過年数等の考慮

毀損部分の補修

原則一枚単位
毀損部分が複数枚の場合はその枚数分(裏返しか表替えかは、毀損の程度による)
(畳表)
経過年数は考慮しない。

カーペット
クッションフロア

毀損等が複数箇所の場合は、居室全体 (畳床・カーペット・クッションフロア)6年で残存価値1円となるような負担割合を算定する。
フローリング
原則㎡単位
毀損等が複数箇所の場合は、居室全体
(フローリング)補修は経過年数を考慮しない。(フローリング全体にわたる毀損等があり、張り替える場合は、当該建物の耐用年数で残存価値1円となるような負担割合を算定する。)




 



 
毀損部分の補修

壁(クロス)

㎡単位が望ましいが、賃借人が毀損した箇所を含む一面分までは張替え費用を賃借人負担としてもやむをえないとする。 (壁〔クロス〕)
6年で残存価値1円となるような負担割合を算定する。

タバコ等の

ヤニ、臭い

喫煙等により当該居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、居室全体のクリーニング又は張替え費用を賃借人負担とすることが妥当と考えられる。



毀損部分の補修 1枚単位 (襖紙、障子紙)
経過年数は考慮しない。
1本単位 (襖、障子等の建具部分、柱)
経過年数は考慮しない。





設備の補修 設備機器 補修部分、交換相当費用 (設備機器)
耐用年数経過時点で残存価値1円となるような直線(又は曲線)を想定し、負担割合を算定する。
鍵の返却 補修部分
紛失の場合は、シリンダーの交換も含む。
鍵の紛失の場合は、経過年数は考慮しない。交換費用相当分を借主負担とする。
通常の清掃※ クリーニング
※通常の清掃や退去時の清掃を怠った場合のみ
部位ごと、又は住戸全体 経過年数は考慮しない。借主負担となるのは、通常の清掃を実施していない場合で、部位もしくは、住戸全体の清掃費用相当分を借主負担とする。

 

 

 へぇ-、いろいろとあるんだなぁー。でも博士、経過年数とか負担割合って何ですか?

 

 そうだね、もし壁とか床を汚してしまったから全部を新品に替えなければならないとなるとその費用負担が大きくなってしまうよね。そこで、貸主も借主も次の表を参考にしてその負担の割合を決めるようにしてくださいということのガイドラインを出しているんだよ。

 設備等の経過年数と賃借人負担割合(耐用年数6年及び8年、定額法の場合)

 賃借人負担割合(原状回復義務がある場合) 

 

 

 このグラフどういうことですか?

 

 このグラフは、壁のクロスや床のクッションフロアーの残価率を示したもので、たとえばクロスの新品を壁に貼ったとして上記の表にあるように、6年で残存価値が1円となるようにグラフにしたものだよ。

 

 それで、100%から年数がたつごとに%が下がって6年たったら1円になってしまうんだね。

 

そうだよ、だからたとえば4年住んで退去する時に、子供がクロスに落書きをしていて貸主からクロスの張替え費用を請求されたとしても、新しく張替える費用の全額を支払う必要はなく、自分が汚したクロスの残り2年分の残存価値である約33%を支払えば良いということになるんだよ。

 

 それなら安心だね。

 

うん、ただこれはあくまでもガイドラインなので、あとは貸主や管理会社の人と話し合って、お互いが納得して決めるようにするんだよ。

 

 そうだね。

 

 それと、原状回復に関する一般的な原則は今までの通りなんだけど、例外として契約時に借主、貸主が合意している場合には、特定の補修費用について借主の負担とするという特約を決めることも出来るんだよ。ただし、公序良俗に反しない(民法第90条)範囲の内容で、かつ消費者の利益を一方的に害することのないこと(消費者契約法第8条、第9条、第10条)に限られているけどね。

 

 借主が納得していないと無効なんだよね。

 

 そうだね、以上のように原状回復の費用負担が決まり借主の負担分が有った場合には、契約時に預けている敷金からその負担分を差し引かれるんだよ。また、賃料の滞納分やその他の借主が負担すべき費用が有る場合には併せて差し引かれるよ。もし、敷金の額では不足する場合には不足分を支払わなければならないので気を付けるようにするんだよ。

 

 日頃からの注意が必要だということだね。

 

 もし、分からない点や不安に思うようなことがあれば、大阪宅建協会をはじめ不動産関連団体が窓口となる相談所まで相談して下さいね。

 

 

 

 ライター 長尾 敏春(北摂支部会員)